明けましておめでとう御座います。
旧年中は多くのお客様に支えられ、心より感謝申し上げます。
新しい年を迎え、私たちもまた気持ちを新たに、料理と向き合う日々が始まりました。2026年も皆様よろしくお願い致します。本年も、季節や食材、そして一皿に込める想いを大切にしながら、皆様の記憶に残る料理をご提供してまいります。
新年最初にご紹介する一皿が、「黒毛和牛スジのテンジャン香る赤ワイン煮込み」です。この料理は、寒さが一段と深まるこの季節にこそ味わっていただきたい、身体と心をじんわりと温めてくれる存在です。長い時間をかけて仕上げる煮込み料理には、派手さはなくとも、作り手の誠実さと技術、そして食材への敬意が如実に表れます。私たちはその本質を大切にし、この一皿を2026年のスタートにふさわしい料理としてご用意しました。
主役となるのは、選び抜いた黒毛和牛の上質なスジ肉です。スジ肉と聞くと、硬い、扱いが難しいという印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、黒毛和牛のスジは別格です。きめ細やかな繊維の中に上質なコラーゲンと旨みが詰まっており、適切な下処理と火入れを行うことで、驚くほど滑らかで深い味わいへと変化します。私たちはまず、そのスジ肉を丁寧に下処理し、余分な脂や不純物を取り除くところから始めます。この地道な工程が、最終的な口当たりと味わいを大きく左右するからです。
下処理を終えた黒毛和牛のスジ肉は、香味野菜と共に窯で一度焼き上げます。ここが、この料理の大きな特徴のひとつです。玉ねぎ、人参、セロリ、にんにくなどの香味野菜と一緒に高温の窯に入れることで、表面には香ばしい焼き色が付き、内部には旨みが閉じ込められます。直火とは異なる、窯ならではの包み込むような熱が、肉と野菜それぞれの甘みと香りを最大限に引き出します。この工程を経ることで、後の煮込みに深みと立体感が生まれるのです。
窯で焼き上げた黒毛和牛のスジ肉と香味野菜は、その後、赤ワインと共にじっくりと煮込まれます。使用する赤ワインは、果実味と酸のバランスが良く、煮込みに適したものを厳選しています。アルコール分は加熱の過程で飛び、ワインが持つ果実のニュアンスやタンニンのコクだけが、ソースに溶け込んでいきます。ここに加わるのが、この料理のもう一つの要となる「テンジャン」です。
テンジャンとは、韓国の伝統的な味噌で、大豆の旨みと発酵由来の奥行きある香りが特徴です。赤ワイン煮込みという西洋的な料理に、あえてテンジャンを合わせることで、味わいに独特の深みと余韻が生まれます。テンジャンの持つコクと塩味が、黒毛和牛スジのゼラチン質と絡み合い、赤ワインの酸味と見事な調和を見せます。決して前に出過ぎることなく、しかし確かに存在感を放ち、食べ進めるごとに新しい表情を感じさせてくれるのです。
煮込みは短時間では完成しません。弱火で、時間をかけ、素材と対話するように火を入れていきます。途中、何度も状態を確認し、アクを取り、味を整えます。そうして完成した黒毛和牛スジは、箸やフォークを入れるだけでほろりと崩れるほど柔らかく、口に含めば濃厚な旨みがゆっくりと広がります。コラーゲン質が溶け込んだソースは、舌にまとわりつくような滑らかさを持ち、赤ワインとテンジャン、香味野菜のエッセンスが幾層にも重なった味わいを生み出します。
この「黒毛和牛スジのテンジャン香る赤ワイン煮込み」は、決して派手な料理ではありません。しかし、一口目から最後の一口まで、じっくりと味わっていただくことで、その奥深さと完成度を感じていただける一皿です。寒い夜にワインと共に楽しむのも良し、パンや付け合わせと合わせてソースを余すことなく味わうのもおすすめです。食後には、身体の芯から温まるような満足感が残ることでしょう。
2026年の始まりにあたり、私たちはこの料理に「変わらぬものを大切にしながら、新しい表現に挑戦する」という想いを込めました。良い食材を選び、丁寧に手をかけ、時間を惜しまず仕上げる。その基本を守りながら、テンジャンという異なる文化の要素を取り入れることで、新たな一皿を生み出しています。それは、これからの一年、そしてその先も、私たちが大切にしていきたい姿勢そのものです。
改めまして、明けましておめでとう御座います。
2026年も皆様よろしくお願い致します。
本年も、心を込めた料理と共に、皆様をお迎えできることを楽しみにしております。
ぜひこの機会に、「黒毛和牛スジのテンジャン香る赤ワイン煮込み」をご賞味ください。
皆様の新しい一年の始まりに、温かく、記憶に残るひとときを添えられましたら幸いです。